バッキバキマッチョは風邪ひきやすい説【免疫】【インフルエンザ】
2020/11/30
「高強度の運動」が感染症の罹患に繋がるということはトレーナー界隈では一般的に知られています。
この理由は、高強度運動によって、
一時的にNK細胞やT細胞などの免疫細胞が大きく減少することが原因であるという学説があるからです。
この一時的に免疫細胞が減少し、免疫力が下がる状態を、
コペンハーゲン大学のベンタ・ペダーセンによって、
「オープンウインドウ説」として1994年に提唱されました。
上のグラフを見るに、高強度運動負荷をかけた場合、オープンウィンドウが生じていることが分かります。
ただ、自己免疫疾患において注目すべきは、運動中に一過性の免疫増強が起こっているということ。
つまり、オープンウィンドウが生じるということは、
運動中には、弱強度の運動を行ったときよりも多く免疫増強が生じるとも受け取れます。
グラフのオープンウインドウのところだけを見れば
「免疫力が下がるからトレーニングはやらないほうがいい」と思う人もいるかもしれません。
ただ、運動強度が高ければ高いほど免疫細胞が活性化することに注目すれば、
オープンウインドウを問題なくやり過ごせるのならば、
できるだけ高強度のトレーニングをしたほうが良いとも言えます。
人間誰しもの身体には恒常性(ホメオスタシス)が備わっています。
簡単に言うと『慣れ』です。
そもそも免疫力が弱い人が突然全力で運動したら、
オープンウインドウが致命的なダメージになりますよね。
子どもの運動会で久しぶりに全力を出したお父さんの翌日が例です。
そうならない程度の運動を日常的な習慣にしておくと、恒常性が底上げされるのです。
底上げされた免疫力が高いレベルにあれば、
オープンウインドウが生じても大した健康被害は起こりません。
いつもハードな練習をしているアスリートが、病弱なイメージがないのと一緒です。
そういった意味では、アスリートの免疫力は筋肉を使うことへの「慣れ」の集大成とも言えます。
知らない人がほとんどなのでお伝えしますと、
免疫力はいくら栄養をあるものを食べても強くなりません。
栄養学と免疫学はまったく別です。
栄養は不動細胞(場所が特定されている細胞)は栄養がいわばエサですが、
免疫細胞は、獲得免疫の観点から非自己である外敵(ウイルスや病原菌)がエサです。
免疫力はバイ菌に触れて鍛えるものなのです。
ですから、除菌ばかりしている潔癖症の人は免疫力がとても低いはずです。
突然ハードな運動を始めて、オープンウインドウを全開にしないよう、
徐々に開けていくイメージで運動強度を調整しつつ免疫力の底上げを図りましょう。